阪神タイガース観戦記

このブログは阪神タイガースの試合を私見で振り返るものである。

あのチームに思うこと

丸の巨人FA移籍に伴う人的補償で、長野久義の広島移籍が報じられた。
巨人に入りたい一心で2度のドラフト指名(06年・ロッテ、08年・日本ハム)を断り、09年にようやく入団した巨人愛溢れる選手である。
その愛が原動力となったのだろう。1年目からレギュラーを確保し、天才的とも言えるバッティング技術と守備能力の高さで巨人ファンを湧かせてきた。
14年の膝の故障以来、以前のような俊敏さを感じさせるプレーは減っていったが、そのセンスが落ちることはなく入れ替わりの激しい巨人外野陣にあってレギュラーの座を保ち続けていた。
その長野が、人的補償による移籍である。12月21日に契約更改した会見では、丸について「すごい選手なのでチームに加わってくれることはすごいプラスになる。優勝に近づける。一緒に頑張れたら」と語っていたが、まさかその2週間後に“代わり”として放出されるとは夢にも思わなかっただろう。ちなみに年俸は3000万円アップしていて(2億2000万円)、球団からはしっかりと評価されていた。
それなのにプロテクト枠から漏れたのである。確かに巨人には広島から大竹を獲得した際に、伸び盛りの一岡を持って行かれた苦い記憶があり、今回も若手を保護しにいったのだろうという推測は出来る。だが、それにしても長野をプロテクトから外すとは。その非情さに驚く。

だが、これは実は非情なのではなく、巨人の巧みな戦略なのである。
つい先日、炭谷のFA移籍に伴う人的補償で内海が西武へ移籍した。この時も生え抜きエースを保護しなかったことに驚きを覚えたが、その時に巨人の石井編成本部長が「いつの日か、再びジャイアンツに戻ってきてくれることを期待しています」とコメントした。
これは単なる親心ではない。内海はすでにFA資格を得ており、今季をやり過ごせば再び巨人への移籍を希望することができるのである。いわゆる脇谷ケースだ。
脇谷は片岡治大のFA移籍に伴う人的補償で西武へ移籍。まだFA資格は得ていない点で内海とは異なるが、移籍の2年後に資格を取得し古巣巨人へと戻っていった。
ユーティリティプレーヤーである脇谷を保護したくとも、多数の大物選手を抱えるチーム事情でできなかった。だが、条件さえ整えば再び戻ってくることがわかったのである。
このパターンを有効活用しない手はない。同じような状況を作為的に生み出せば良いのだ。
資格取得済みの生え抜きスター選手にはあらかじめプロテクトから外したことは伝えておく。そして、もし移籍するようなことになれば、翌年にFA宣言すれば手を挙げるこことを約束する。チーム事情で移籍を余儀なくされる選手には表に出ない補償金みたいなものも渡しているだろう。自らの不祥事を裏社会に大金を払って解決させた男が指揮官なのだ。そのくらいへっちゃらだ。
それでなくともプロテクト枠から外すためにあえて上原を自由契約にした狡猾さがある(本人はもちろん否定)。近年は犯罪行為が表に出すぎてしまった感があるが、もともと江川を獲るために信じられない裏技を駆使するような球団。何をしてきても驚かない。
今回は内海と長野に白羽の矢が立った。
内海は移籍会見の場で俳優顔負けの名演技で驚きと新たな決意とほのかな巨人への愛を語った。
ここで巨人への愛を語っておくことで、翌年の移籍への布石が打たれているである。
言うまでもなく、長野もFA資格取得済み。
内海以上に巨人愛があると思われる男である。誰よりも巨人に入りたかった男がこんな屈辱的な移籍に耐えられるはずがない。移籍確定の時点で引退発表するくらいの意地を貫いてほしい。だが、それはしない。裏協定があるからだ。
ここは移籍会見での名演技に注目である。
将来有望な若手選手と貢献度の高かった生え抜き選手、自分のチームに来たがっている大物選手。この3つを全部手に入れたい。欲張り巨人軍は2年がかりの壮大な計画を実行に移したのだ。
2020年は内海も長野も再び巨人のユニフォームを着ているに違いない。

と、アンチ巨人的なバカバカしい想像を書きなぐってみた。

それにしても、炭谷。阿部を捕手復帰させ、小林、大城、宇佐美と若手有望株がいるさなかでレギュラー格のキャッチャーを獲るとは思わなんだ。
89年の山倉、有田がいる中で中日から中尾を獲り、村田真一の出番がなくなる。という状況と似ている。まあ、この年は日本一になっているので、この戦略は全く間違っていないのだが。

メジャー帰りの岩隈、オリックス戦力外の中島とベテラン選手を獲得した。
近年の若返りを図るチーム方針から完全に逸脱した。村田修一の解雇はいったい何だったんだ。

まあ、あれもこれも原辰徳だから出来たのだろう。
由伸なら、内海と長野はプロテクトしただろうな。

回顧・阪神タイガース2018

●戦績
62勝79敗2分 6位 20ゲーム差(78勝61敗4分 2位 10ゲーム差)
得点:577(589) 失点:628(528)
本塁打:85(113) 打率:.253(.249) 防御率:4.08(3.29) 盗塁:77(70)
※()内は昨季成績

 

まずは戦績で振り返る。
去年の貯金17から借金17に。シーズン前はすごく期待していたのに悲しい結果となった。
打てないイメージがあったが、去年より打率は良い。得点も12しか減っておらずほぼ横ばい。では、何が最下位の原因か。
防御率が0.79も悪くなっている。それを証明するかのように失点も100点増加。攻撃力が変わらないのに、防御力が落ちれば弱くなるのは自明。加えて、試合の流れを変えることのできる本塁打も28本も減らしている。
このデータだけで、守りきれず、雰囲気も変えられずズルズル敗戦、という今年の戦いが浮かび上がる。
昨季の反省から得点力向上を図ったのにもかかわらず、それが機能せず、なおかつ投手力を落とすという最悪の図式が17年ぶりの最下位という結果を生み出した。

本塁打を期待したロサリオの不振、さらなる成長を期待した中谷の伸び悩み。本塁打数減の責任はこの二人が負うところが大きいだろう。ロサリオはギャンブル要素があったが中谷は20本塁打から5本塁打に激減。一人で15本塁打減らしている。
去年の成績がフロックだと思っていたから、そんなに裏切られた感はないが。
全般的にとにかく甲子園で打てなかったのは痛かった。
その原因はわからない。球団レベルでは何かつかんでいるかもしれない。本拠地で勝てないストレスはファン以上にチームが強く感じたはずだ。
秋頃には「ラッキーゾーン再建」と一部で報道されたほど。
個人的には、投高打低のチームなので打撃上位の相手に利することの方が大きい球場縮小は反対。高校野球もこれ以上本塁打を増やせば大味な試合が更に増えると思う。
糸井福留は今季も頑張ってくれた。
ベテランの頑張りが続いているうちに若手が伸びていくのが理想なのだが、うまくいっていない。
その中で糸原はレギュラーを勝ち取った。143試合152安打はえらい。
春キャンプから「振る力はとても強い」と金本監督が言い続けていたその力が覚醒した形となった。
上本、鳥谷、北條、植田、木浪ら二遊間のレギュラー争いは激しいが糸原が頭一つ抜けているの。
大山の活躍にも目を向けよう。
9月にバカスカ打ちまくり、来季への希望を示してくれた。ドラフト1位指名は間違っていなかった、それを証明するかのような活躍だった。あとは好不調の波をいかに少なくできるかであろう。打ちまくっていたころは大山に打順が回ると、とてもワクワクした。ファンを呼べる選手である素質は十分にある。サードレギュラーの筆頭であることは間違いく、矢野阪神の要になる選手とにらんでいる。
代打で原口が驚異的な活躍。本人は代打に甘んじるつもりはないと言っているが、梅野がゴールデングラブ賞を獲った今、その居場所は来季も代打の切り札に収まるだろう。ここは神様の系譜を受け継ぐ男として頑張ってほしい。
伊藤隼太も頑張った。左の代打としての起用と福留休養日のスタメン出場。自分の居場所を見つけたシーズンになった。彼もまた代打で甘んじるつもりはないと契約更改の場で語っていた。自分より年長の福留、糸井がレギュラーを張っている外野ならば、チャンスはあるかもしれない。高山、板山、江越と同じ左のライバル外野手は多い。そこにドラ1の近本も割って入る。地味ながら激しい外野手争いは開幕まで続けられそうだ。
来季が正念場なのは俊介か。昨季は打棒が揮ったが、今季は低迷。守備力はチームで1、2を争うが守備でベンチ枠を一つ使うほどチームに余裕はなかった。来季も打てなければ再来年は厳しいかもしれない。頑張れ俊介。
陽川は一昨年、昨年のファーム二冠王(本塁打、打点)。こういう成績を残した選手は1軍でも結構パカスカ打つことが多いのだが、陽川君は例外なのか。本塁打は6。昇格当初は打ったが、研究されてからはパタリと止まった。この壁を越えられないとレギュラーにはなれない。打つ力で大山とサードレギュラーを争ってほしい選手。

投手力の衰退も最下位の原因の一つだろう。失点を昨季よりも100増やした。
メッセンジャーは8月11日以降全く勝てなくなった。
エースが夏場に勝てなくなれば順位も下がる。
メッセは今季11勝。よく頑張っていたと思うが、結局勝てないままシーズンを終えたのは不安だ。
1イニングで大量失点するケースが増えたのもとても気がかり。来季からは日本人選手扱いとなり、更なる活躍を期待したいが、年齢も年齢なのであまり大きな希望は持たないことにしよう。
秋山の失速は悲しかった。
17試合で5勝10敗、防3.86。球に勢いがなく、生命線であるコントロールも低下した。もともと昨季の活躍が半信半疑ではあったので、この結果もある程度受け止められるが、このまま鳴尾浜の帝王に戻ってしまうのは切ない。打撃も魅力的で生観戦したくなる選手。復活してほしい。
岩貞小野。左右の若手伸び悩みブラザーズ。
岩貞は援護に恵まれなかったのもあるが一昨年の二桁勝利投手が7勝では寂しい。
シーズン後の日本-台湾戦で滅多打ちにされたのもその寂しさに拍車をかける。
ただ、本人は日米野球でいろいろと収穫があったみたいなので、その成果を来季の楽しみとしよう。
小野も7勝。ルーキーイヤーだった昨年の2勝から5勝も上乗せしたのは評価できるが、相変わらずの制球難はいただけない。規定投球回数未満にも関わらず81四球10暴投では大事な試合は任せられない。
ちなみに日本人投手最多勝利が7勝に終わったのは2リーグ制以降球団史上初の不名誉記録らしい。
藤浪晋太郎
この男の成績に賭けたのが金本監督だった。だが、13試合で5勝3敗、防5.32。ルーキーならまだしもエース候補がこれでは厳しい。辞任やむなし。
それでも昨季の3勝から2つ上乗せ。苦しみながらもわずかながら進歩している。
海の向こうで超人的な活躍をする同世代の大谷と天と地ほどの差が開いてしまったが、ポテンシャルは藤浪の方が上だと信じている。
肘にメスを入れた大谷に東京五輪の主役は張れまい。ここは来季から完全覚醒した藤浪が日本のエースとして侍ジャパンを引っ張るのだ。そう『藤浪ジャパン』の誕生だ。そうなっていれば自ずと我がチームも常勝軍団となっているだろう。
中継ぎ陣の低迷も痛かった。
昨季、50試合以上登板した6人の投手(藤川、マテオ、高橋聡、桑原、岩崎、ドリス)は押しなべて成績を落とした。
特にマテオは妻の出産に立ち会うために帰国し、再来日してからは安定感が全くなくなってしまった。普通は新たな命の誕生に奮起するはずなのだが。17試合で6.75の防御率では戦力外通告やむ無しである。
高橋聡は15試合で防3.95。左のセットアッパーとして岩崎とともにチームを支えていただけにこの成績低下は厳しい。ケガをしっかり治して来季は復活してほしい。
その岩崎はケガもなくシーズンを投げとおしたが、安定感は下がった。61試合登板は偉いが防4.94。リリーフで防5点に迫ろうかという投手を投げさせなければならなかったベンチの苦悩が思い浮かぶ。
このブルペンの苦境を打開しようと投入されたのが能見
先発投手としては頭打ちになり始めたベテラン投手は最長でも2イニングしか投げない環境下では思う存分に腕を振り、45試合(先発は3試合のみ)で防2.56と自分の居場所を確立した。来季も頼れるベテラン左腕として君臨してもらいたい。
抑えのドリスは1勝7敗32S、防2.85。防御率もあと1点ほど下げてほしいが、なんといっても7敗が痛い。5位中日と1ゲーム差の最下位だったことを考えれば、この失敗数がせめて5つであれば金本監督の辞任もなかったのではないかと思われる。それでも32Sは立派。来季も契約するとのことなので、他のリリーフ投手同様安定感の向上が望まれる。
桑原藤川は昨季よりやや成績を落とした。
それでもシーズンをフルに戦いぬいた。この点は大いに評価できる。
来季も期待したいが、2年連続で60試合以上投げた桑原の肩の具合と39歳になる藤川の衰えはとても気になる。
この不安を払拭するには投手陣の全体的な底上げだろう。
その点でチームは最適の補強をした。
オリックスからFAで西を獲得し、中日を戦力外になったガルシアを獲得。
二人とも今季ローテーションを守り二桁勝利を記録した選手である。
先発陣が安定すれば、リリーフの負担が軽減される。
メッセンジャー、藤浪、秋山、岩貞、小野の中にこの二人が入る。激化するローテ争いに才木、望月、青柳、浜地、岩田、高橋遥、馬場が殴り込む。質の高い競争が生まれるだろう。

梅野ゴールデングラブ賞初受賞が今オフ最大の慶事
甲斐キャノンが話題になったが、関西のスポーツ紙は「梅ちゃんバズーカ」と春先から盛り上げていた。盗塁阻止率は3割2分。リーグトップは小林(.341・巨人)に譲ったが、セ・リーグの捕手としては唯一の規定打席到達者。そこも評価されての受賞だろう。肩の強さもさることながらスローイングの正確性が更に向上されていたように思う。阪神で2年連続でゴールデングラブ賞は73、4年の田淵以来いない。是非とも頑張ってもらいたい。
132試合 .259、8本はレギュラー捕手として合格点。犠打数もトップの菊地(広島)の30個に次ぐ28個。地味ながら、貢献度の高い数字である。
来季もスタメンマスクの筆頭候補。あと2分打率が上がれば不動のものとなるだろう。
ちなみに打率は甲斐(.213)よりも4分6厘も高い。
バズーカがキャノンを超える日を待ちわびる。

~来季への希望~
西ガルシアの加入はかなりのプラス材料。
二人とも今季の規定投球回数を満たしており、コマ不足の悩みを払拭してくれそうだ。
毎年だが、藤浪の復活を期待。ファームで付きっきりで面倒を見てくれた福原投手コーチが来季は1軍へ昇格。この支えが大きな活力になると信じたい。
これまた毎年だが助っ人にも期待。ピアース・ジョンソン。球の力は強そう。まだ27歳で伸びしろもあるのでは。メッセ先輩から様々なことを教わり、飛躍してもらいたい。
秋季キャンプでやたらと名前が挙がっていた浜地。同期の才木がある程度成績(6勝10敗)を残しただけに、本人も期するものがあるだろう。
打撃では高山(.172、1本)の再生を願う。
6大学最多安打記録を残した男のポテンシャルはこんなものではないはずだ。
そしてジェフリー・マルテエンゼルスで大谷と頑張っていた男が日本へやってきた。きっと大谷から日本流の活躍法を盗んでいるはずだ。2016年はあのプホルスよりも本塁打率が高かった男。今度こそ、4番を任せられる助っ人なはずだ!
そして、ひそかにナバーロも期待している。
シュアな打撃が評価されての残留。マルテがずっこけて、主力が故障して、困ったときに日本野球を完全に吸収したナバーロが我々を救ってくれるのである。

「超積極野球」の旗印の下、ファーム日本一を果たした矢野燿大
まさかの監督就任になったが「かねもっちゃんが背中を押してくれた」と舞台裏を明かした。盟友金本が志半ばで果たせなかった夢を達成して、金本野球と積極野球の融合により進むべき道が間違っていなかった証明してほしい。
ドラフトでも走れる選手を多く指名した。走る野球で勝ち上がっていこうという心づもりだろう。
目指せ143盗塁。1試合に1つは塁を奪っていこうじゃないか。
そうすれば得点力も上がるだろう。
打つ方への不安はぬぐい切れないが、投手陣が安定し、走る野球が体現できればある程度のところへは行けるのではないか。
頑張れ矢野阪神

ドラフトを振り返る

一ヶ月以上経ってから振り返るも何もないが、新戦力がどのように活躍できるのかを夢想しつつ、ドラフト戦略を考察していきたい。

 

1位 近本光司(大阪ガス・24歳/外野手)
2位 小幡竜平(延岡学園・18歳/内野手
3位 木浪聖也(ホンダ・24歳/内野手
4位 齋藤友貴哉(ホンダ・23歳/投手)
5位 川原陸(創成館・17歳/投手)
6位 湯浅京己(富山GRNサンダーバーズ・19歳/投手)
育成1位 片山雄哉(福井ミラクルエレファンツ・24歳/捕手)

まず1位。大阪桐蔭の藤原恭大を指名したが、ロッテに持って行かれてしまった。甲子園で活躍したスピード感に溢れた次代のスター候補を獲り損ねる。近年、生え抜きスター野手がとんと現れることのない状況を打破したかったが失敗した。
次に外れ1位で立命館大の辰巳涼介を指名するも、これは楽天に持って行かれる。
指名後の会見で「まず楽天カードから作らないと」と大勢の報道陣を前に堂々とボケられる肝の据わった選手だった。活躍されると悔しい。
そして、外れ外れ1位で獲得できたのが近本光司。
あくまでも外野手にこだわって指名し続けた。これは高山、中谷、江越など伸び悩む若手に喝を入れているのだと思う。
その起爆剤は仮契約後の会見で「僕の足にビックリしないように」とかなり強気のコメントを残してくれた。江越、植田、糸原、熊谷、島田と俊足自慢が多いなかでの自信あふれる発言。辰巳と同じくらい胆力のある選手なのかもしれない。
そして、入団会見。彼は「水金近本ドッカーン」と広島カープの意味不明な来季のキャッチフレーズを文字り活躍を誓ってくれた(近本自身はこの会見で教えられるまで「水金地火木 ドッテン カープ」は知らなかったらしいが)。
背番号5を与えられ、球団の期待値は高い。ケガしがちな糸井、不惑を越えた福留にいつまでも頼っているようではこのチームに未来はない。
近本の加入で高山らの闘志に一層火が付き高いレベルでの競争が見られればこれほど成功したといえるドラフトは無いと言えるだろう。

2位は小幡竜平。
総合力の高い高卒内野手、という触れ込みだ。それが事実であれば3年後には1軍で活躍してほしい人材である。高校時代に守っていたポジションは主にショート。北條、植田、熊谷と若手ショートは多い中での指名。高卒出身の北條、植田が期待通りの活躍を出来ていないという背景があるだろう。近年は内野手に限らず高卒選手を育て切れていないチームの育成力も問われることになる。
本人の目標は「1番ショート」。同世代のスーパールーキー根尾に対抗心を燃やしているとのこと。いまでこそ「根尾世代」だが、これを「小幡世代」に変えられるくらいの活躍をしてもらいたい。

3位は木浪聖也。
ここでも内野手を指名。しかも社会人。ショート、セカンド、サードを守ることのできる広角中距離打者ということらしい。
複数ポジションを守れる内野手をこんなに集めてどうするつもりなんだろう。競争力を高めるのは悪いことではないが、あまりにタイプが似てる選手が多くないか。いや、木浪に罪はない。
社会人時代に開花したという長打力が本物であれば、北條や植田らには無い特徴で起用機会は増えるかもしれない。本人も社会人出身ということで鼻息も荒かろう。

4位は齋藤友貴哉。
ここでようやく投手を獲得。木浪と同じホンダ。すなわち社会人出身の即戦力候補。
最速153キロの動く速球が持ち味。とは日刊スポーツの評。
今秋の日米野球において山川穂高や岡本和真が二線級のメジャー投手の動くボールに苦労をしていた場面を思い起こすと、この評価が正しければ結構イイ線行くんじゃないかと思ってしまう。
CS放送でのドラフト中継では小関順二と西尾典文が「この選手が4位まで残っていたのは驚きだ」と言っていた。アマ野球評論家の評価は高い。
齋藤を下位で獲れたことはラッキーなのかもしれない。
どんぐりの背比べ状態が慢性的に続くタイガース投手陣の中で突き抜ける存在になってもらいたい。

5位は川原陸。
高卒投手。ここまでの指名経緯を見るとまずは野手、即戦力投手という並び。川原に期待されるのは3、4年後の戦力という事になるだろう。
昨秋の神宮大会で最強大阪桐蔭に土をつけたピッチャー。根尾、藤原が順調に育っていきスターになったところで成長した川原が再び大阪桐蔭勢をきりきり舞いにするような場面が見られればこれほど気持ち良いことはない。
高卒左腕という共通点から井川のようになることを願う。せめて仲田幸司

6位は湯浅京己。
高卒で独立リーグに入り、そのオフにドラフト指名された。この経緯から彼の秘めたる能力の可能性に魅力を感じてしまう。
彼のここまでの物語は阪神ファンにはおなじみの土井麻由実さんが詳しく記事にしてくれているので、詳細はそこで知ってもらうことにしよう。
とにかく、伊藤智仁から教わったことをしっかりとプロの舞台で発揮してほしい。

育成1位は片山雄哉。
小豆畑を解雇したことで一つ空いたキャッチャーの枠を育成で獲得。
1軍は梅野がレギュラー、ベンチに坂本、長坂という形が主だった。
来季は捕手復帰を再び目標に掲げる原口が割って入る。そうなれば、1軍に呼ばれる可能性があるのは第3の捕手というポジションしか残されていない。
しかも、坂本、長坂との争いになる(残念だが、岡崎と小宮山にはもう可能性はないと思う)。
来年の6月には25歳になる片山にとってのんびりしている暇はない。猛烈アピールから育成の枠を取っ払い、ファームなんぞは目もくれず1軍に殴り込みをかけるくらいの意気が必要だろう。
片山のことも、これまた土井麻由実さんが詳しく記事にしてくれているので、一読してもらいたい。
田中雅彦の教えを遺憾なく発揮し、梅野を脅かす存在になってくれればと思う。

 

2018年は7人の選手を獲得。上位3人を野手で固めた。伸び悩む若手たちの尻を叩く狙いもあるのだろうし、育っていかない現状に焦っているようにも見える。
しかしながら、同じタイプの選手を集めまくってどうするんだという思いはある。しかも3人とも左打ち。なので、中谷、江越、陽川と底が見え始めている長距離(っぽい)右打者への警告にはなっていない。
ファンからすればホームランを打てる打者を心待ちにしているのだが、今年はそこへはいかなかった。去年、清宮、安田を狙った姿勢は何だったのだろう。大きいのを打てる高卒選手を獲りにいかなかったのは少し残念。
「先発投手は何人いても良い」補強戦略の時によく耳にする言葉だが、今年の即戦力は齋藤のみ。小野、才木、望月、浜地という若手投手陣の奮起に賭けているのだろうか。はたまた助っ人戦略に自信があるのか。まあ、去年は育成含めて5人獲っているという事情はあるだろうが。
8月以降勝てなくなったメッセ、去年だけが良かっただけかもしれない疑惑の秋山、永遠の悩めるスター藤浪という不安満載の投手陣である。もう少し、ドラフトで補完しても良かったのではと思う。

とはいえ、ドラフト戦略の答えが出るのは3~5年後。
散々「この指名はどうなのよ」と言われた、一昨年の1位大山は立派な4番候補じゃあないか。9月の爆発ぶりが2~3ヶ月くらい続くぐらい成長すれば、もうウダウダ言ってくる人もいなくなる。
当たり外れがあるのは仕方ないし、全員が全員活躍できるわけではないのはわかっている。その時のチーム状況、コーチとの相性もあるし。
それでも全員の活躍を望むのがファンというもの。
この7人が素晴らしいプロ野球生活を歩むことを願うとともに、そうでなかったとしても幸せな人生を送ってくれることを切に願う。

第143戦 vs中日25回戦【2018.10.13】

ナゴヤドーム
阪神 010 000 010 1 3
中日 100 010 000 0 2
○藤川5勝3敗2S ●祖父江2勝2敗 Sドリス1勝7敗32S
阪神 竹安、高橋聡、岡本、望月、能見、桑原、藤川、ドリス
中日 柳、石川翔、ロドリゲス、佐藤、岩瀬、岡田、祖父江

終戦は延長の末に勝利をもぎとり、金本監督へのささやかな贈り物となった。
「3年間いろいろ目をかけて朝練を付き合った選手が来年以降、芽が出て花が咲いてくれないと、僕まで悲しくなる。来年以降凄くきれいな花を咲かせてほしい」
来季以降のプランもあったであろうに、球団の反対派の画策により志半ばで職を辞する金本の心を癒すのは、彼が育てた若手の活躍に他ならない。
「しんどかったですね。やっぱり。全部僕が環境づくりををする能力がなかったからこういう結果になったわけで、選手たちは本当に一生懸命やってくれた。若い選手は自信を持ってほしい。どんどん失敗して、チャレンジ精神をもって、前向きに、前のめりになって沢山失敗してほしい」
恐らく、自分自身が広島で体験したことをそのまま言っているのではないだろうか。
広島と大阪とでは失敗したときの叩かれ方に大きな差がある気もするが、そんなことを言っていては一流の選手にはなれない。
若手の選手たちには、技術はもちろんだが、バッシングにも負けない強い心を育んでもらいたい。

金本監督、お疲れ様でした。

第142戦 vsベイ25回戦【2018.10.10】

阪神甲子園球場
ベイ 000 100 000 1
阪神 000 001 10X 2
本 中谷5号
○能見4勝3敗1S ●今永4勝11敗 Sドリス1勝7敗31S
ベイ ウィーランド、濱口、砂田、三嶋、今永、バリオス
阪神 岩田、能見、藤川、ドリス

甲子園での最終戦は辛くも勝利で飾ることが出来た。
甲子園では過去最低となる21勝39敗2分。
度重なる雨天中止の影響も多大にあるが、観客動員は289万8976人。金本政権では最低の数字となった。
本拠地最終戦のセレモニーでの金本監督のスピーチは謝罪の弁に終始した。
そして、このセレモニーの裏で、金本解任派による工作が進んでいようとは。
10月11日付の記事で『金本監督続投』とあるのに、12日付の日刊スポーツ1面は『矢野、新監督』である。
久々に我らが阪神球団の得意技であるお家騒動が明るみに出た。
こんなことをしているようだと転落への道のりを着実に歩んでいるのではないかと危惧するが、我々ファンにはどうにもしようがないので見守るしかない。

さて、ベイのロペスが
一塁手シーズン守備率10割のプロ野球新記録を達成。
946度の守備機会で無失策。
ちょっと凄い。

第141戦 vs巨人25回戦【2018.10.9】

阪神甲子園球場
巨人 002 020 230 9
阪神 100 012 000 4
本 岡本32、33号
○畠2勝1敗 ●桑原5勝3敗
巨人 メルセデス、畠、山口俊、菅野
阪神 メッセンジャー、岡本、桑原、望月、岩崎

最下位が決定した後の伝統の一戦
クライマックスシリーズへ意気込む巨人と目標を失った阪神とでは、試合に臨むモチベーションが違いすぎた。
日米100勝を目論むメッセンジャーであったが、5回10安打3四球4失点で試合を作ることは出来なかった。
8月半ばから全く勝てないエースだが、この日は「モチベーションの違い」ということで大目に見よう。
決して彼の力が落ちたとか、そういうわけではない(と思いたい)。
6裏に同点に追いつくも、7、8表で5点を追加され勝利への希望の灯はかき消された。
どちらも岡本のホームランで失点しており、我が軍に足りないものを持っている相手チームを羨望のまなざしで見つめることしかできない。
11戦連続で本塁打がない私たち。「ちょっと長打力が課題ですね」とは試合後の金本監督の弁。
春のキャンプで沢山振り込んでいた、と連日報じられていたことは嘘だったのだろうか。

甲子園で球団ワーストとなる39敗。幸い関東住まいの私はホームでの惨劇を体験せずにいられるが、本拠地で勝利する姿を観られない関西の同胞を思うと胸が締め付けられる。
でも、弱い時ってこんなもの。
私たちは最弱の時代を過ごしてきた。こんなことではへこたれない。
弱い時も強い時も出来ることはただ一つ。
力の限り応援することだけだ。

第140戦 vsヤクルト25回戦【2018.10.8】

明治神宮野球場
阪神 000 010 040 5
ヤク 240 000 00X 6
本 バレンティン38号
○ブキャナン10勝11敗 ●才木6勝10敗 S石山3勝2敗35S
阪神 才木、竹安、岩崎、岡本、能見
ヤク ブキャナン、山本、松岡、梅野、石山

才木2回6安打2四球6失点。。
最下位決定。
17年ぶりだそう。
そうか。16年間も最下位になっていなかったのか。
17年前の野村政権最終年の成績は
57勝80敗3分 打率.243 90本塁打
2ケタ勝利を挙げた投手はおらず(福原、井川の9勝が最多)、5位の中日に5.5差をつけられる断トツの最下位だった(※)。
※2001年のセ・リーグは勝利数上位球団が上位になるというルールから、ゲーム差表記がなかったらしい。そうだったのか。全く覚えていない。。
今季は最下位になったとはいえ、3位以下はほぼダンゴ状態。01年ほど悲観する状況ではない。
そういう意味では、物心をついてから暗黒時代しか知らずに育った自分としては、今のタイガースは強いチームである。
あのころと違い、この16年の中には2度のリーグ優勝があり、2位ながらも日本シリーズ出場もある。
恵まれている。
だが、下を見すぎて、現状に満足するのは良いことではない。
本拠地でなかなか勝てず、勝負所で抑えきれない、打てない、という弱さを克服するのは容易いことではないだろう。
だが、去年のヤクルトも96敗していたではないか。
監督が小川に戻り、特に大きな補強もなく2位になった。(石井琢朗河田雄祐コーチが広島から来たというのは大きいと思うが)
現有戦力でも使い方によっては十分イケるということだ。
ここはファームでチーム戦力を肌で知る矢野新監督に期待である。

第139戦 vsヤクルト24回戦【2018.10.7】

明治神宮野球場
阪神 000 000 000 0
ヤク 310 010 10X 6
本 バレンティン37号
○石川7勝6敗 ●岩貞7勝10敗
阪神 岩貞、望月、岩崎、岡本
ヤク 石川、大下、近藤、風張

完封負け。
ヤクルト戦は9連敗らしい。
今季は得意にしていたはずなのに、いつの間にか苦手チームに。
おかしいなあ。
岩貞は立ち上がりが悪い時はとことん悪い。
もう仕方ない。
辞退者続出で日米野球に選ばれたが、こんな投手を温情で選ばなければいけないほどタイガースの選手はコマ不足である。
日本代表の価値、というものが野球においてどれほどあるのかは計りがたい所だが、選ばれないよりは選ばれた方が良い。
仕方なく選ばれる選手が岩貞。それが今の阪神タイガースの現状を示している。

この日、今成と西田が戦力外通告
悲しいかな、ムードメーカーを置いておくほどの余裕は今のチームにはない。

第138戦 vsDeNA24回戦【2018.10.6】

阪神甲子園球場
ベイ 000 000 300 0 3
阪神 011 010 000 1 4
本 ソト39号
○桑原5勝2敗 ●バリオス2勝5敗
ベイ 東、藤岡、今永、三上、パットン、バリオス、砂田
阪神 藤浪、能見、ドリス、桑原

連敗を5で止め、10月初勝利。
甲子園での引き分けを挟んでの連敗も8で止めた。甲子園勝利は9月12日以来らしい。
本拠地でこんなに負けているチームがクライマックスシリーズとかなんとかほざいてはいけない。

久しぶりの勝利はルーキーの殊勲打によってもたらされた。
島田海吏。
中学校時代に桐生祥秀に勝ったことのある脚力の持ち主。というのが入団当初からの売りだった。
シーズン終了間際とはいえ、結果が伴って紙面を湧かすのは良いことである。
足が速い。という選手は多いが、盗塁が多い、に結びつくことがとても少ないタイガースの選手たち。
背番号53はそんな状況を打破してほしいという思いもあって背負わされているだろう。
偉大なる前任者、赤星を島田が超えていくことを願ってやまない。

先発の藤浪は7回3安打7四死球奪三振3失点。まあまあか。
フォアボールを出した割に試合を作ったことを評価しよう。
だが、そのフォアボールきっかけでソトに痛恨の3ランを浴びていることは反省してもらおう。
それにしてもソト。全然打つと思ってなかったのに、なんでこんなにパカスカ打つのかね。こういう穴馬券的な助っ人うらやましい。

ファームでタイガースが日本一に輝いた。
12年ぶりの快挙。巨人を破って成し遂げたことも気持ちが良い。
矢野監督は「超積極野球」を掲げ、走塁革命をもたらした。
掛布の地道で丁寧な教えが、矢野のスパイスによって覚醒した。という風に捉えたい。
一軍は弱いが二軍が強い。一軍半の選手ばかりだからファームで強い、という見方も出来るが、ここは若手が着実に力をつけている。とプラス思考で考えることにしよう。
二軍で主力だった江越も板山も一軍でまるで結果を残せていないが、来季に芽吹くと信じよう。

第137戦 vs中日24回戦【2018.10.5】

阪神甲子園球場
中日 020 202 000 6
阪神 000 000 010 1
本 福田13号 アルモンテ15号
○笠原6勝4敗 ●小野7勝7敗
中日 笠原、佐藤、ロドリゲス
阪神 小野、望月、才木、藤川

2、4、6回とキレイに2点ずつ取られる。
これでは勝てない。
2回の失点は植田のエラーから。守備で起用されている選手がトンネル。打てない上に守れないでは一軍にいる価値はない。
だが、悲しいかなケガ人続出の現状では植田を起用せざるを得ないのである。
ドラフトでは2位で高校生の小幡、3位で社会人の木浪を獲得した。いずれも遊撃手。ドラフト戦略のことはおいおい触れるとして、来季からはただでさえ多い遊撃手候補がさらに増えるという事になる。
大和並みに守備が上達しないことには一軍に居場所はない。その大和でさえレギュラーは確約されていなかった。
来季は植田にとって正念場となる。

原口が球団代打安打記録に並んだ。
23本。
9月21日に骨折による登録抹消で記録更新はついえたかと思ったが、戻ってきた。記録更新のために痛みをおして昇格してきたのだろう。
ここまで代打で52打数23安打。打率は驚異の.442。
しかし本人は代打で甘んじるつもりはない、というコメントをところどころで残している。
捕手としてはインサイドワーク、肩の強さともに厳しく、一塁手としてはパンチ力に欠ける。
起用法が難しい選手だが、今季は代打という役割に自分の居場所を見出した。
来季はどう起用されるのか。矢野監督の采配に注目したい。