阪神タイガース観戦記

このブログは阪神タイガースの試合を私見で振り返るものである。

回顧・阪神タイガース2018

●戦績
62勝79敗2分 6位 20ゲーム差(78勝61敗4分 2位 10ゲーム差)
得点:577(589) 失点:628(528)
本塁打:85(113) 打率:.253(.249) 防御率:4.08(3.29) 盗塁:77(70)
※()内は昨季成績

 

まずは戦績で振り返る。
去年の貯金17から借金17に。シーズン前はすごく期待していたのに悲しい結果となった。
打てないイメージがあったが、去年より打率は良い。得点も12しか減っておらずほぼ横ばい。では、何が最下位の原因か。
防御率が0.79も悪くなっている。それを証明するかのように失点も100点増加。攻撃力が変わらないのに、防御力が落ちれば弱くなるのは自明。加えて、試合の流れを変えることのできる本塁打も28本も減らしている。
このデータだけで、守りきれず、雰囲気も変えられずズルズル敗戦、という今年の戦いが浮かび上がる。
昨季の反省から得点力向上を図ったのにもかかわらず、それが機能せず、なおかつ投手力を落とすという最悪の図式が17年ぶりの最下位という結果を生み出した。

本塁打を期待したロサリオの不振、さらなる成長を期待した中谷の伸び悩み。本塁打数減の責任はこの二人が負うところが大きいだろう。ロサリオはギャンブル要素があったが中谷は20本塁打から5本塁打に激減。一人で15本塁打減らしている。
去年の成績がフロックだと思っていたから、そんなに裏切られた感はないが。
全般的にとにかく甲子園で打てなかったのは痛かった。
その原因はわからない。球団レベルでは何かつかんでいるかもしれない。本拠地で勝てないストレスはファン以上にチームが強く感じたはずだ。
秋頃には「ラッキーゾーン再建」と一部で報道されたほど。
個人的には、投高打低のチームなので打撃上位の相手に利することの方が大きい球場縮小は反対。高校野球もこれ以上本塁打を増やせば大味な試合が更に増えると思う。
糸井福留は今季も頑張ってくれた。
ベテランの頑張りが続いているうちに若手が伸びていくのが理想なのだが、うまくいっていない。
その中で糸原はレギュラーを勝ち取った。143試合152安打はえらい。
春キャンプから「振る力はとても強い」と金本監督が言い続けていたその力が覚醒した形となった。
上本、鳥谷、北條、植田、木浪ら二遊間のレギュラー争いは激しいが糸原が頭一つ抜けているの。
大山の活躍にも目を向けよう。
9月にバカスカ打ちまくり、来季への希望を示してくれた。ドラフト1位指名は間違っていなかった、それを証明するかのような活躍だった。あとは好不調の波をいかに少なくできるかであろう。打ちまくっていたころは大山に打順が回ると、とてもワクワクした。ファンを呼べる選手である素質は十分にある。サードレギュラーの筆頭であることは間違いく、矢野阪神の要になる選手とにらんでいる。
代打で原口が驚異的な活躍。本人は代打に甘んじるつもりはないと言っているが、梅野がゴールデングラブ賞を獲った今、その居場所は来季も代打の切り札に収まるだろう。ここは神様の系譜を受け継ぐ男として頑張ってほしい。
伊藤隼太も頑張った。左の代打としての起用と福留休養日のスタメン出場。自分の居場所を見つけたシーズンになった。彼もまた代打で甘んじるつもりはないと契約更改の場で語っていた。自分より年長の福留、糸井がレギュラーを張っている外野ならば、チャンスはあるかもしれない。高山、板山、江越と同じ左のライバル外野手は多い。そこにドラ1の近本も割って入る。地味ながら激しい外野手争いは開幕まで続けられそうだ。
来季が正念場なのは俊介か。昨季は打棒が揮ったが、今季は低迷。守備力はチームで1、2を争うが守備でベンチ枠を一つ使うほどチームに余裕はなかった。来季も打てなければ再来年は厳しいかもしれない。頑張れ俊介。
陽川は一昨年、昨年のファーム二冠王(本塁打、打点)。こういう成績を残した選手は1軍でも結構パカスカ打つことが多いのだが、陽川君は例外なのか。本塁打は6。昇格当初は打ったが、研究されてからはパタリと止まった。この壁を越えられないとレギュラーにはなれない。打つ力で大山とサードレギュラーを争ってほしい選手。

投手力の衰退も最下位の原因の一つだろう。失点を昨季よりも100増やした。
メッセンジャーは8月11日以降全く勝てなくなった。
エースが夏場に勝てなくなれば順位も下がる。
メッセは今季11勝。よく頑張っていたと思うが、結局勝てないままシーズンを終えたのは不安だ。
1イニングで大量失点するケースが増えたのもとても気がかり。来季からは日本人選手扱いとなり、更なる活躍を期待したいが、年齢も年齢なのであまり大きな希望は持たないことにしよう。
秋山の失速は悲しかった。
17試合で5勝10敗、防3.86。球に勢いがなく、生命線であるコントロールも低下した。もともと昨季の活躍が半信半疑ではあったので、この結果もある程度受け止められるが、このまま鳴尾浜の帝王に戻ってしまうのは切ない。打撃も魅力的で生観戦したくなる選手。復活してほしい。
岩貞小野。左右の若手伸び悩みブラザーズ。
岩貞は援護に恵まれなかったのもあるが一昨年の二桁勝利投手が7勝では寂しい。
シーズン後の日本-台湾戦で滅多打ちにされたのもその寂しさに拍車をかける。
ただ、本人は日米野球でいろいろと収穫があったみたいなので、その成果を来季の楽しみとしよう。
小野も7勝。ルーキーイヤーだった昨年の2勝から5勝も上乗せしたのは評価できるが、相変わらずの制球難はいただけない。規定投球回数未満にも関わらず81四球10暴投では大事な試合は任せられない。
ちなみに日本人投手最多勝利が7勝に終わったのは2リーグ制以降球団史上初の不名誉記録らしい。
藤浪晋太郎
この男の成績に賭けたのが金本監督だった。だが、13試合で5勝3敗、防5.32。ルーキーならまだしもエース候補がこれでは厳しい。辞任やむなし。
それでも昨季の3勝から2つ上乗せ。苦しみながらもわずかながら進歩している。
海の向こうで超人的な活躍をする同世代の大谷と天と地ほどの差が開いてしまったが、ポテンシャルは藤浪の方が上だと信じている。
肘にメスを入れた大谷に東京五輪の主役は張れまい。ここは来季から完全覚醒した藤浪が日本のエースとして侍ジャパンを引っ張るのだ。そう『藤浪ジャパン』の誕生だ。そうなっていれば自ずと我がチームも常勝軍団となっているだろう。
中継ぎ陣の低迷も痛かった。
昨季、50試合以上登板した6人の投手(藤川、マテオ、高橋聡、桑原、岩崎、ドリス)は押しなべて成績を落とした。
特にマテオは妻の出産に立ち会うために帰国し、再来日してからは安定感が全くなくなってしまった。普通は新たな命の誕生に奮起するはずなのだが。17試合で6.75の防御率では戦力外通告やむ無しである。
高橋聡は15試合で防3.95。左のセットアッパーとして岩崎とともにチームを支えていただけにこの成績低下は厳しい。ケガをしっかり治して来季は復活してほしい。
その岩崎はケガもなくシーズンを投げとおしたが、安定感は下がった。61試合登板は偉いが防4.94。リリーフで防5点に迫ろうかという投手を投げさせなければならなかったベンチの苦悩が思い浮かぶ。
このブルペンの苦境を打開しようと投入されたのが能見
先発投手としては頭打ちになり始めたベテラン投手は最長でも2イニングしか投げない環境下では思う存分に腕を振り、45試合(先発は3試合のみ)で防2.56と自分の居場所を確立した。来季も頼れるベテラン左腕として君臨してもらいたい。
抑えのドリスは1勝7敗32S、防2.85。防御率もあと1点ほど下げてほしいが、なんといっても7敗が痛い。5位中日と1ゲーム差の最下位だったことを考えれば、この失敗数がせめて5つであれば金本監督の辞任もなかったのではないかと思われる。それでも32Sは立派。来季も契約するとのことなので、他のリリーフ投手同様安定感の向上が望まれる。
桑原藤川は昨季よりやや成績を落とした。
それでもシーズンをフルに戦いぬいた。この点は大いに評価できる。
来季も期待したいが、2年連続で60試合以上投げた桑原の肩の具合と39歳になる藤川の衰えはとても気になる。
この不安を払拭するには投手陣の全体的な底上げだろう。
その点でチームは最適の補強をした。
オリックスからFAで西を獲得し、中日を戦力外になったガルシアを獲得。
二人とも今季ローテーションを守り二桁勝利を記録した選手である。
先発陣が安定すれば、リリーフの負担が軽減される。
メッセンジャー、藤浪、秋山、岩貞、小野の中にこの二人が入る。激化するローテ争いに才木、望月、青柳、浜地、岩田、高橋遥、馬場が殴り込む。質の高い競争が生まれるだろう。

梅野ゴールデングラブ賞初受賞が今オフ最大の慶事
甲斐キャノンが話題になったが、関西のスポーツ紙は「梅ちゃんバズーカ」と春先から盛り上げていた。盗塁阻止率は3割2分。リーグトップは小林(.341・巨人)に譲ったが、セ・リーグの捕手としては唯一の規定打席到達者。そこも評価されての受賞だろう。肩の強さもさることながらスローイングの正確性が更に向上されていたように思う。阪神で2年連続でゴールデングラブ賞は73、4年の田淵以来いない。是非とも頑張ってもらいたい。
132試合 .259、8本はレギュラー捕手として合格点。犠打数もトップの菊地(広島)の30個に次ぐ28個。地味ながら、貢献度の高い数字である。
来季もスタメンマスクの筆頭候補。あと2分打率が上がれば不動のものとなるだろう。
ちなみに打率は甲斐(.213)よりも4分6厘も高い。
バズーカがキャノンを超える日を待ちわびる。

~来季への希望~
西ガルシアの加入はかなりのプラス材料。
二人とも今季の規定投球回数を満たしており、コマ不足の悩みを払拭してくれそうだ。
毎年だが、藤浪の復活を期待。ファームで付きっきりで面倒を見てくれた福原投手コーチが来季は1軍へ昇格。この支えが大きな活力になると信じたい。
これまた毎年だが助っ人にも期待。ピアース・ジョンソン。球の力は強そう。まだ27歳で伸びしろもあるのでは。メッセ先輩から様々なことを教わり、飛躍してもらいたい。
秋季キャンプでやたらと名前が挙がっていた浜地。同期の才木がある程度成績(6勝10敗)を残しただけに、本人も期するものがあるだろう。
打撃では高山(.172、1本)の再生を願う。
6大学最多安打記録を残した男のポテンシャルはこんなものではないはずだ。
そしてジェフリー・マルテエンゼルスで大谷と頑張っていた男が日本へやってきた。きっと大谷から日本流の活躍法を盗んでいるはずだ。2016年はあのプホルスよりも本塁打率が高かった男。今度こそ、4番を任せられる助っ人なはずだ!
そして、ひそかにナバーロも期待している。
シュアな打撃が評価されての残留。マルテがずっこけて、主力が故障して、困ったときに日本野球を完全に吸収したナバーロが我々を救ってくれるのである。

「超積極野球」の旗印の下、ファーム日本一を果たした矢野燿大
まさかの監督就任になったが「かねもっちゃんが背中を押してくれた」と舞台裏を明かした。盟友金本が志半ばで果たせなかった夢を達成して、金本野球と積極野球の融合により進むべき道が間違っていなかった証明してほしい。
ドラフトでも走れる選手を多く指名した。走る野球で勝ち上がっていこうという心づもりだろう。
目指せ143盗塁。1試合に1つは塁を奪っていこうじゃないか。
そうすれば得点力も上がるだろう。
打つ方への不安はぬぐい切れないが、投手陣が安定し、走る野球が体現できればある程度のところへは行けるのではないか。
頑張れ矢野阪神