ドラフトを振り返る
一ヶ月以上経ってから振り返るも何もないが、新戦力がどのように活躍できるのかを夢想しつつ、ドラフト戦略を考察していきたい。
1位 近本光司(大阪ガス・24歳/外野手)
2位 小幡竜平(延岡学園・18歳/内野手)
3位 木浪聖也(ホンダ・24歳/内野手)
4位 齋藤友貴哉(ホンダ・23歳/投手)
5位 川原陸(創成館・17歳/投手)
6位 湯浅京己(富山GRNサンダーバーズ・19歳/投手)
育成1位 片山雄哉(福井ミラクルエレファンツ・24歳/捕手)
まず1位。大阪桐蔭の藤原恭大を指名したが、ロッテに持って行かれてしまった。甲子園で活躍したスピード感に溢れた次代のスター候補を獲り損ねる。近年、生え抜きスター野手がとんと現れることのない状況を打破したかったが失敗した。
次に外れ1位で立命館大の辰巳涼介を指名するも、これは楽天に持って行かれる。
指名後の会見で「まず楽天カードから作らないと」と大勢の報道陣を前に堂々とボケられる肝の据わった選手だった。活躍されると悔しい。
そして、外れ外れ1位で獲得できたのが近本光司。
あくまでも外野手にこだわって指名し続けた。これは高山、中谷、江越など伸び悩む若手に喝を入れているのだと思う。
その起爆剤は仮契約後の会見で「僕の足にビックリしないように」とかなり強気のコメントを残してくれた。江越、植田、糸原、熊谷、島田と俊足自慢が多いなかでの自信あふれる発言。辰巳と同じくらい胆力のある選手なのかもしれない。
そして、入団会見。彼は「水金近本ドッカーン」と広島カープの意味不明な来季のキャッチフレーズを文字り活躍を誓ってくれた(近本自身はこの会見で教えられるまで「水金地火木 ドッテン カープ」は知らなかったらしいが)。
背番号5を与えられ、球団の期待値は高い。ケガしがちな糸井、不惑を越えた福留にいつまでも頼っているようではこのチームに未来はない。
近本の加入で高山らの闘志に一層火が付き高いレベルでの競争が見られればこれほど成功したといえるドラフトは無いと言えるだろう。
2位は小幡竜平。
総合力の高い高卒内野手、という触れ込みだ。それが事実であれば3年後には1軍で活躍してほしい人材である。高校時代に守っていたポジションは主にショート。北條、植田、熊谷と若手ショートは多い中での指名。高卒出身の北條、植田が期待通りの活躍を出来ていないという背景があるだろう。近年は内野手に限らず高卒選手を育て切れていないチームの育成力も問われることになる。
本人の目標は「1番ショート」。同世代のスーパールーキー根尾に対抗心を燃やしているとのこと。いまでこそ「根尾世代」だが、これを「小幡世代」に変えられるくらいの活躍をしてもらいたい。
3位は木浪聖也。
ここでも内野手を指名。しかも社会人。ショート、セカンド、サードを守ることのできる広角中距離打者ということらしい。
複数ポジションを守れる内野手をこんなに集めてどうするつもりなんだろう。競争力を高めるのは悪いことではないが、あまりにタイプが似てる選手が多くないか。いや、木浪に罪はない。
社会人時代に開花したという長打力が本物であれば、北條や植田らには無い特徴で起用機会は増えるかもしれない。本人も社会人出身ということで鼻息も荒かろう。
4位は齋藤友貴哉。
ここでようやく投手を獲得。木浪と同じホンダ。すなわち社会人出身の即戦力候補。
最速153キロの動く速球が持ち味。とは日刊スポーツの評。
今秋の日米野球において山川穂高や岡本和真が二線級のメジャー投手の動くボールに苦労をしていた場面を思い起こすと、この評価が正しければ結構イイ線行くんじゃないかと思ってしまう。
CS放送でのドラフト中継では小関順二と西尾典文が「この選手が4位まで残っていたのは驚きだ」と言っていた。アマ野球評論家の評価は高い。
齋藤を下位で獲れたことはラッキーなのかもしれない。
どんぐりの背比べ状態が慢性的に続くタイガース投手陣の中で突き抜ける存在になってもらいたい。
5位は川原陸。
高卒投手。ここまでの指名経緯を見るとまずは野手、即戦力投手という並び。川原に期待されるのは3、4年後の戦力という事になるだろう。
昨秋の神宮大会で最強大阪桐蔭に土をつけたピッチャー。根尾、藤原が順調に育っていきスターになったところで成長した川原が再び大阪桐蔭勢をきりきり舞いにするような場面が見られればこれほど気持ち良いことはない。
高卒左腕という共通点から井川のようになることを願う。せめて仲田幸司。
6位は湯浅京己。
高卒で独立リーグに入り、そのオフにドラフト指名された。この経緯から彼の秘めたる能力の可能性に魅力を感じてしまう。
彼のここまでの物語は阪神ファンにはおなじみの土井麻由実さんが詳しく記事にしてくれているので、詳細はそこで知ってもらうことにしよう。
とにかく、伊藤智仁から教わったことをしっかりとプロの舞台で発揮してほしい。
育成1位は片山雄哉。
小豆畑を解雇したことで一つ空いたキャッチャーの枠を育成で獲得。
1軍は梅野がレギュラー、ベンチに坂本、長坂という形が主だった。
来季は捕手復帰を再び目標に掲げる原口が割って入る。そうなれば、1軍に呼ばれる可能性があるのは第3の捕手というポジションしか残されていない。
しかも、坂本、長坂との争いになる(残念だが、岡崎と小宮山にはもう可能性はないと思う)。
来年の6月には25歳になる片山にとってのんびりしている暇はない。猛烈アピールから育成の枠を取っ払い、ファームなんぞは目もくれず1軍に殴り込みをかけるくらいの意気が必要だろう。
片山のことも、これまた土井麻由実さんが詳しく記事にしてくれているので、一読してもらいたい。
田中雅彦の教えを遺憾なく発揮し、梅野を脅かす存在になってくれればと思う。
2018年は7人の選手を獲得。上位3人を野手で固めた。伸び悩む若手たちの尻を叩く狙いもあるのだろうし、育っていかない現状に焦っているようにも見える。
しかしながら、同じタイプの選手を集めまくってどうするんだという思いはある。しかも3人とも左打ち。なので、中谷、江越、陽川と底が見え始めている長距離(っぽい)右打者への警告にはなっていない。
ファンからすればホームランを打てる打者を心待ちにしているのだが、今年はそこへはいかなかった。去年、清宮、安田を狙った姿勢は何だったのだろう。大きいのを打てる高卒選手を獲りにいかなかったのは少し残念。
「先発投手は何人いても良い」補強戦略の時によく耳にする言葉だが、今年の即戦力は齋藤のみ。小野、才木、望月、浜地という若手投手陣の奮起に賭けているのだろうか。はたまた助っ人戦略に自信があるのか。まあ、去年は育成含めて5人獲っているという事情はあるだろうが。
8月以降勝てなくなったメッセ、去年だけが良かっただけかもしれない疑惑の秋山、永遠の悩めるスター藤浪という不安満載の投手陣である。もう少し、ドラフトで補完しても良かったのではと思う。
とはいえ、ドラフト戦略の答えが出るのは3~5年後。
散々「この指名はどうなのよ」と言われた、一昨年の1位大山は立派な4番候補じゃあないか。9月の爆発ぶりが2~3ヶ月くらい続くぐらい成長すれば、もうウダウダ言ってくる人もいなくなる。
当たり外れがあるのは仕方ないし、全員が全員活躍できるわけではないのはわかっている。その時のチーム状況、コーチとの相性もあるし。
それでも全員の活躍を望むのがファンというもの。
この7人が素晴らしいプロ野球生活を歩むことを願うとともに、そうでなかったとしても幸せな人生を送ってくれることを切に願う。