阪神タイガース観戦記

このブログは阪神タイガースの試合を私見で振り返るものである。

CS・Final vsヤクルト第3戦【2022.10.14】

明治神宮野球場
阪神 000 120 000 3
ヤク 000 000 51x 6
○田口1勝 ●青柳1敗 Sマクガフ2S
阪神 青柳、浜地、岩貞、ケラー
ヤク 高橋、木澤、田口、清水、マクガフ

《試合メモ》
・青柳はエースのピッチングを見せてくれた。惜しむらくは7裏に与えた青木へのデッドボールか。(6.2回112球3安打4四球1死球奪三振4失点)・4表。無死1塁。5番マルテがライト前へチーム初ヒットを放つ。怪我さえなければ打つ。来季もいてほしい。ラパンパラ、また観たい。・4表。一死1、3塁で7番陽川がセンターへ犠牲フライ。サウスポーキラーとしてスタメン入りした力を遺憾なく発揮。
・5表。近本のハーフスイングを三塁塁審山路がセーフ判定。改心したに違いない。(結局、打席結果は三振だったけど。)
・5表。先頭の青柳がレフトへツーベースを打つとバント失敗などもありながらも、北條がツーベースを放ち、再びチャンスを作り、二死2、3塁で4番大山がセンター前へ2点タイムリーヒット。4番の仕事をしてくれた。大山が打つと嬉しい◎・スタメン起用した2人(北條、陽川)が結果を残す。矢野采配の奥深さよ。
・試合終了後、クラブハウスへ引き上げる途中、A.ロッドがレフトスタンドの子供ファンにバットをプレゼント。何て良いヤツなんだ。君がタテジマに袖を通したこと、私は一生忘れない。ロハスJr.とのアベックアーチ最高だったよ。これからの人生が幸せであることを切に願う。・引き潮。満ちかけたけど、やっぱり引いた。波とはままならぬものよな。

・落ち着いて冷静に守備をしよう。
マルテ。送球が間に合わない時は無理して投げちゃダメ。(7裏。二死満塁で山崎の一ゴロを、1塁送球では間に合わないと悟り、2塁へ送球するも(これも間に合わないタイミングではあった)高く浮いて悪送球。レフトへボールが転がり2点返される)
浜地。グラブトスは思っている以上に難しいので余程の自信がない限りは試みちゃダメ。(7裏。二死満塁で村上のボテボテのピッチャーゴロを浜地がグラブトスで1塁へ送球。コントロールされなかったボールは1塁ベースに就くマルテ、そのカバーにまわった植田海のはるか上を行き、ライトファールゾーンを転々。その間にランナー3人が一気に返る。ピーゴロで3人返るのか...ちゃんと捕って投げても間に合いそうなタイミングではあった。仮に間に合わなくても3人ホームに返ることはなかった)
結果、日刊スポーツ紙上で古巣の勝利に浮かれる宮本慎也から「考えて野球をしていない」と断罪される。
・ここぞという場面で打てるようになろう。
2表。四球2つで得た無死1、2塁のチャンスで6番サトテルがバント失敗。7番陽川空振り三振。ここで取れていればどれほど楽であったか。。・8裏。岩貞、先頭の中村にフォアボール。何を警戒してるのか全くもって謎。結果、失点につながる。うーん。安定感が足りない。
・8裏。岩貞の後を受けたケラーが山田にタイムリーを浴び失点。完全なる負け試合へと導く。開幕戦と最終戦で打たれちゃうところがね、悲しいね。来季、やり返す!

惜別の辞

ラストタクトは良くも悪くも矢野阪神らしかった。奇跡の日本一でこれ以上ない矢野ガッツを見せてくれることを夢見たけれど、そんな都合の良い幕切れになるわけがないことは薄々わかっていた。今のチームはそんなに強くない。
けれど、開幕9連敗からのクライマックスシリーズ進出は本当に立派だった。
10月14日まで野球を楽しませてくれたことには感謝しかない。


まさかの金本監督解任劇から火中の栗を拾う形で就任し、早4年。
就任前のウエスタン・リーグでは日本一になっていた。2、3年後に満を持して監督就任、というのが本来の路線であったはずだ。だが、思いがけない形で盟友金本が去った。あの当時、その思いを引き継げるのは矢野しかいなかった。

船出となった2019年の開幕戦はやはりヤクルト戦だった。
延長戦の末のサヨナラ勝ちだった。メッセが投げ、ルーキー近本が躍動し、PJ、ドリス、能見、桑原が懸命に腕を振った。
監督自らが大いに喜ぶ姿は新鮮だった。新しいチームが出来る。そう思った。そして、それは間違いではなかった。

この4年間で信じられないほど走れるチームになった。ウエスタン・リーグのチーム盗塁記録を更新した手腕は本物だった。「超積極的」を掲げ、チャレンジすることを促し続けた。攻めたミスならばそれを咎めなかった。
走れるチームを作るのはそう簡単なことではない。あれだけ伝統的に走るイメージの強いカープが今季は26個しか盗塁できていないのだ。
この遺産は生かし続けて欲しい。

チャレンジした分、エラーも増えた。
走った分とエラーした分。どちらが勝ち負けに直結したのかはわからない。が、エラーは目立つだけに、格好の批判対象になる。それでも、その信念を曲げなかった。
そして、最終戦はそのエラーで負けた。
ぎりぎりのプレーやったと思うからね。あれをアウトにするチームになっていかないとダメだし、あれでいいとは思えないんで、みんながしっかり受け止めながら、1人1人成長していくしかないと思います
最後であっても、そのコメントはいつもと変わらず未来を見つめていた。

ファンとの距離感が近い人だった。
劇的勝利後のインタビューでは時に涙を見せ、チームが沈んでいる時には鼓舞するメッセージを選手のみならず我々ファンにも届けてくれた。生来、熱い人なのだ。
開幕9連敗後の初勝利のインタビューは特に忘れがたい。

本当にうまくね、行かないことばかりですけど。テレビをご覧の皆さんも、うまくいっている人生を歩んでいる方ばかりではないと思うんでね。僕たちもそういう、もがき苦しみながら前に進む姿から、なんとかね、元気を届けられるような、そういう気持ちでみんな戦ってくれたと思います
ツラい思いも滲ませながら、正直に心の内を話し、何とか喜んでもらおうという思いが垣間見えた。

そんな姿勢は、これまでのどの指揮官よりも親近感に溢れていた。
最近放送された密着番組内で、矢野監督は「先生のような監督でいたい」と語っていた。
感情を押し殺すことなく、共に喜び、共に悲しみ、共に悩み、そして行く道を指し示してくれたその姿は、矢野監督の理想像であったのだ。
この4年間で多くの生徒たちが、その教えに触れてきた。近本が、サトテルが、最終戦後に涙を見せた。恩師に花道を作ってあげられなかった悔しさであろう。
その教えと悔しさが明日のタイガースの糧となる。

私たちファンは教え子ではないけれど、生徒たちの保護者のような気持ちで去り行く矢野先生を見送りたい。

あんな良い先生にはそうそうお目にかかれないだろうな。惜しい人が行ってしまうな。寂しいな。

矢野燿大監督。
ありがとうございました。
あなたといた4年間はとても楽しかったです。