第69戦 vs楽天2回戦【2019.6.19】
阪神甲子園球場
楽天 010 120 000 5 9
阪神 310 000 000 0 4
本 大山10号 ブラッシュ19号
○森原1勝 ●守屋2勝2敗
楽天 美馬、久保、青山、ハーマン、ブセニッツ、高梨、森原、松井
阪神 青柳、岩崎、小野、藤川、ドリス、守屋、能見、浜地
延長戦の末、投手陣しのぎ切れず5連敗。
負け試合が続くのは楽しくない。
ここは、楠淳生アナと解説黒田正宏による「タイガースのピンチを別の話題で緩和させて精神を安定させる」という妙技を繰り出した放送席の様子を振り返って気分をやわらげよう。
楠アナの特徴は、しばしば雑談を挟みながら進行していくところである。打者によっては全く実況をしないまま打席を終えることもある。まあ、テレビなので事細かに状況を伝える必要もなく、このスタンスは有りだろう。
例えば、2表のブラッシュの打席。
楠:黒田さん、覚えてますかね? フリオ・フランコ。大型のフリオ・フランコ。
黒田:ホンマですね。構えも同じような感じで。
楠:ロッテに入りましたフリオ・フランコ。こういうバッティングフォームでした。あの人はバリバリのメジャーリーガーだったんですよね。
黒田:そうです。そうです。
楠:シカゴ・ホワイトソックスにフランク・トーマスという大打者がいたんですが、その人が4番で、フリオ・フランコが3番。
ここから楽天打線の厚みが増したという流れに入ったところで、ブラッシュが内角低めのストレートをレフトスタンドに運ぶ。
打球がスタンドに入るのを確信したところで「もう間違いないでしょう。風にも乗ってホームランの応酬になりました序盤の攻防です」
こんな具合である。
そして、10表。
楠アナと黒田がその妙技を見せる。
この回からマウンドに上がった守屋。
先頭のブラッシュを追い込んでからフォアボールにしてしまう。(ここでも、しつこく「大型のフランコ」というフレーズを挟む楠アナ)
続く銀次は送りバントと見せかけバスターを仕掛け、見事に成功。無死1、2塁の大チャンスを作り出す。
打席にはウィーラー。
相手が大チャンスということは、こちらは大ピンチ。
1点でも勝ち越されれば、昨日の試合で手も足も出なかった松井が登板し敗色濃厚になることは目に見えている。しかも前日の試合で同じような急場をしのげなかった守屋がマウンドにいる。ダメだ。まともな精神状況ではいられない。
ここで楠アナ、別の話題作戦発動。
楠:ちなみにベースボールが今日、6月19日、1846年、初めてプロのベースボールが行われた日。アレクサンダー・カートライトというね、ベースボールの父が。
黒田:すごいですね。
楠:当初はフォアボールではなくセブンボールまでいったりとかね。
黒田:ほぅ
楠:最初はこの辺に投げてください、とかリクエストもできたらしいですね。
黒田:(笑いながら)はは、そうですか
・守屋、1球目を外角低めに決めてストライク
楠:ホーボーケン。ニューヨーク近郊で行われました。ニッカポッカーズがホームチームでした。(少し間をおいて)もうある意味このアウトローも含めて守屋は居直らないといけませんね。
黒田:今のは良いボールですけどね。
(少し間が空き)
楠:色々とルール変更。タッチアップが採用されたり、インフィールドフライが採用されたり、一回投げたピッチャーは戻れないとか、そういうのも整備されていったわけです。
黒田:そうでしょうね。
楠:長い長い歴史です。
・守屋、2球目は変化球が外角低めにバウンドしてボール
(間が空き)
楠:接戦になっています。ベースボールが生まれて180年近辺。二つのリーグが分かれているのも、日本はアメリカをフォローしています。そしてDH制もパ・リーグが採用。プレーオフもあります。このクロスゲーム、雌雄を決するのは一本のタイムリー。1800年代と同じです。
・守屋、3球目は内角高めのストレートが外れてボール
(間が空き)
楠:ウィーラーは何か考えている節がありますか?
黒田:いやぁ、やっぱりあのストライクゾーンという感じで待ってるんじゃないですかね。
楠:シンプルに考えてますね。
黒田:はい
楠:流そうとか、右方向とかないですね。
黒田:あー、それはないと思いますね。
・守屋、4球目はストレートが外高めに浮いてボール
楠:昨日の守屋を知っているだけに、本当に今日のこの守屋の苦悩が分かりますね。
黒田:本当に打たれたらダメって感じでね。
楠:一人目の入りが慎重すぎて
黒田:(食い気味に)こうやってランナーためるとね、やっぱり大量点になりますからね。
楠:はい。延長10回の表。(やや間)昨日も寝付けなかった可能性がありますよね。
黒田:そう思いますよ。特に地元だっただけにね。
楠:ですね。
・守屋、5球目は内角高めのストレートが外れてフォアボール
楠:フォアボールです!
ここで矢野監督がベンチを出てピッチャー交代を告げる。
突如始まった野球の歴史を強引に目の前の試合に組み込ませつつ、心を穏やかにしようとしたが、その思いはマウンドの守屋には届かず大ピンチは無死満塁という超大ピンチに進化してしまった。
結果、ここから後を継いだ能見がこらえきれずに5失点という絶望的なスコアを刻まれ試合は終わる。
ピンチの最中、「三振が欲しいね」「ゲッツーが欲しいね」と視聴者の思いを代弁し続けてくれた黒田。その儚い夢はことごとく打ち破られるのだが、口にしちゃうところが良い。
現役時代はタイガースのユニフォームに袖を通すことはなかったのだが、コーチとしてタイガースに入り、さらにはフロントに入り、徐々にタイガース色を強めていく。極めつけは2014年。クライマックスシリーズ突破での日本シリーズ進出時に和田監督の参謀としてベンチにいたことはファンの記憶に新しい。
それにしても無茶苦茶タイガースファン目線の解説をしてくれる。姫路出身だから元々、大の阪神ファンだったのだろう。
これからも視聴者目線の相槌解説を我々に届けてほしい。